「リスク許容度を把握しましょう」と書かれていても、把握のしかたが書かれていない。診断ツールに年齢と年収を入れると数字が出てくるけれど、その数字が何を意味するのかも分からない。
ここでは、リスクという言葉が何を指しているのかと、自分の許容度が何で決まるのかを整理します。どの商品をどれだけ買うべきかという話はしません。
※本記事は考え方の一般的な整理です。当サイトは金融商品取引業者ではなく、投資助言・代理業の登録も行っていません。特定の商品や配分をすすめるものではありません。投資には元本を毀損する可能性があり、取引には手数料がかかります。制度や税制は改正されることがあるため、最新の内容は金融庁および各金融機関の公式情報でご確認ください。
リスクは「危険」ではなく「振れ幅」
日常語のリスクは危険という意味ですが、投資の文脈では違います。価格が上下に動く幅のことを指します。
大きく下がる可能性があるものは、大きく上がる可能性もある。この両方をまとめてリスクが高いと表現します。上がる方向の動きもリスクに含まれる、という点が日常語との一番の違いです。
リスクが低い商品は振れ幅が小さく、期待できる収益も小さくなる傾向があります。金融庁の説明でも、安全性・収益性・流動性のすべてを備えた商品は存在しないとされています。どれかを取ればどれかが下がる関係です。
許容度を決める4つ
自分がどこまでの振れ幅を持ち続けられるか。これは性格の話ではなく、状況の話です。
1. その資金を使うまでの期間
10年後まで使う予定がない資金と、2年後に使う資金では、耐えられる下落の幅が違います。期間が長ければ、下がった時期をやり過ごして持ち続ける選択ができる。短ければ、使うタイミングで下がっていた場合に打つ手がありません。
期間は年齢そのものではありません。60代でも10年使わない資金なら長期になり、30代でも住宅購入が2年後なら短期です。
2. 収入の安定性
毎月決まった額が入る人と、月ごとに大きく変動する人では、値下がり時の受け止め方が変わります。収入が不安定なほど、投資に回す前の現金を厚く持つ必要が出てきます。
会社員か自営業かという区分もありますが、実際には業界の状況や勤務先の安定度も関わります。
3. 生活防衛資金があるか
病気、失業、家電の故障。予定していない支出が起きたとき、現金がなければ投資している資産を取り崩すことになります。それが値下がりしている時期だと、損失を確定させて生活費に充てる形になる。
生活費の数か月分を現金で確保しておくという考え方が一般に知られていますが、必要額は状況で変わります。収入の変動が大きい人ほど多めに、という整理がされることが多いようです。
4. 値動きを経験したことがあるか
これは意外に大きい要素です。資産が2割下がる場面を経験したことがある人と、初めて経験する人では、同じ下落でも反応が違います。
初めての人は、少額から始めて自分の反応を見るという方法があります。金額が小さければ、下がったときの気持ちを試すコストも小さくて済みます。
許容度を超えると何が起きるか
限度を超えた振れ幅を抱えると、下がった時期に売ってしまう行動につながります。
長期で持つつもりだった資金を、一番売りたくない局面で手放す。これが起きると、方針そのものが崩れます。長期・積立・分散という考え方は、途中の下落を持ち続けることを織り込んだ考え方だからです。それぞれの仕組みは投資戦略の基本にまとめました。
だから許容度は、増やすためではなく、途中でやめないために測るものだと言えます。
測る前に決める2つの数字
診断ツールを使う前に、自分で出せる数字があります。
投資に回さないお金はいくらか。生活費、近く使う予定のある資金、生活防衛資金。ここを引いた残りが、投資に回せる範囲です。
いくらまで減っても持ち続けられるか。投資額が2割下がったときの金額を、実際に計算してみてください。100万円なら20万円です。この金額を見て「持ち続けられる」と思えるかどうかが、実感に近い基準になります。
| 確かめること | 具体的にすること |
|---|---|
| 使うまでの期間 | この資金をいつ使うかを年で書き出す |
| 収入の安定性 | 収入が途切れたとき何か月もつかを計算する |
| 生活防衛資金 | 現金として別に確保している額を確認する |
| 値動きの経験 | 2割下がったときの金額を実際に計算する |
数字が出たら、制度の話に進める
投資に回せる金額と、耐えられる下落の幅。この2つが決まると、はじめて口座や制度の話が意味を持ちます。NISAの枠組みはNISAの基本に、口座を開く手順は証券口座の開設手順と必要書類にあります。
順番が逆になると、商品を選んでから「これは自分に合っていたのか」と後から悩むことになります。まず、投資に回さないお金を決めるところから。
投資には元本を毀損する可能性があります。手数料や税制は変更されることがあるため、最新の内容は金融庁および各社の公式サイトでご確認ください。個別の税務判断は税理士などの専門家にご相談ください。